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2008/05/16

そのきゅう。


 朝です。
 マスターはいつも通りまだ寝ています。
 まぁ、私の役割なのですから仕方ないのですが、一度はマスターが料理する姿を見てみたいものです。
 ………味見は遠慮願いますが。
 いつも通りの手抜きですが、これが一番好きなのですから仕方ありませんよね。
 じゅーじゅー、と卵が焼ける音を聞きながら、マスターを起こすべく声を上げます。
 ………卵は一つだけです。
「マスター、朝ですよー!」
 もちろん………マスターがこれで起きる筈はありません。
 起きたら、きっと今日は厄日です。
 外出は控―――
「う……ん………?」
 ――――厄日ですかっっ!
 こ、これは大変です!
「ま、マスターっ!?何があったんですか!?」
「うん………?どうしたも何も………?」
 ………こ……これはどうしたことでしょうか。
 マスターが声をかけるだけで起きるなんて………
 鼻と口をふさいでも、氷をシャツの中に入れてみても起きないのに………。
「……良く寝たぁ………」
 ………あぁ、そういうことですか。
 マスターがあの時間に寝ることは珍しいですもんね。
 おっと。
 それなら二人分作らなくてはいけませんね。
 マスターにあわせていては私の生活時間が乱れてしまうのでいつも食事は一人なのですが、今日は久しぶりに朝から一緒です。
 ………今更ながら手抜き料理に後悔します。
 厄日です。えぇ。厄日ですとも。


「………ねぇ、椎雫?」
「何ですか?」
 私のほうを怪訝そうに見るマスター。
 私の食べ方に何か不思議なところでもあるのでしょうか。
「……変な食べ方するね」
「何をいってるんですかっ!」
 私は声を荒げます。
「マスターの食べ方が邪道なんですっ!いいですか!」
 私はまだ手をつけていない食パンを掲げました。
「耳の固めの食感と微かな味!そして真ん中のふわりとして、それでいてべたつかない白の部分!」
 パンっ!という音と共に、食パンが色別に分離されます。
「この二つの味は一つずつ味わうのが通なんです!一緒に食べるのは邪道なんですっ!」
「そ、そうなんだ………」
 偉大なる食PAN道におののき、見を引くマスター。
「これが分からない人は食パンを食べる資格はありませんっ!」
「いやそれは言いすぎじゃない………?」
 ぐ、っと拳を握る私に余計なことを言うマスター。
「………こういうのはノリなんです。口をはさまないで下さい」
「ご、ごめ………」
 分かればいいんです。
 なにやらおどおどしているマスターは置いておいて、私は食べかけの『く』の字と『ロ』の字をほおばります。
「………♪」
「なんで椎雫が食パンが好きなんだろ………」
 ………だれが教えるもんですか。
「初めて食べたプリンとかが好きなのは分かるんだけどさ………なんで食パン?」
「秘密です」
 心の中でマスターのいう誤りを訂正しつつ、言います。
 私が初めて食べたものこそが食パンです。
 マスターは、私が『味覚』を得てからの話をしているのです。
 いえ、あれは胃が機能してからの話でしたっけ………?
 ………まぁ、良いです。
 私がはじめて食べたのが食パンであれば、それで。
「………ごちそうさま」
「っん。ごちそうさまでした」
 ほぼ同時に別メニュー・・・・を食べ終え、食後の挨拶。
 礼儀、らしいのですが、礼儀というのがなんなのか、いまいち良く理解できません。
 常識、とも違うみたいですし。
「じゃ、行ってくるね」
「え?………まだ7時ですよ?もうですか?」
「せっかく早起きしたんだし………たまにはね」
 ………たまにはここでゆっくり、でもいいと思うのですが。
 ですが、それを言うわけにはいきません。
「そうですか。……いってらっしゃい、マスター」
「うん、いってきます」
 あの服は一体何日着替えないつもりなのでしょうかね。私がこっそり洗ってなければ、上着は多分一ヶ月は毎日着てますよ………?
「………行っちゃいました」
 また、暇です。
 特に買い物などもする必要はないで―――おや。
 食パンがなくなってるではないですか。
 明日の分まではあったはずですが………?
「………マスター?」
 と、自分で呟いて思い出します。
 そういえば、熱がこもってしまって食べてしまった気が………
 夕方にでもマスターに付き合ってもらいましょう。
 それより、『学校』というのは何をするんでしょうか。
 マスターは「勉強するところ」と言いますが、マスターの知識はあまり増えていませんし。
 人付き合いを学ぶところ、とも聞いたことがあるのですが、マスターのあの人嫌いではどうしようもないと思うのですが。
 ………見に行ってみましょうか。
 まだ『学校』は始まってないですし。
 たまには、いいですよね。
 私がドアノブに手をかけると、私の頭に警告文が下ります。
 それでも無視しようとすると、私のプログラムに命令文が下ります。
 ………マスターが自慢する、自作セキュリティというやつです。
 が………マスターの知識は私の知識。
 マスターが作ったものなら、外すことができます。
「……しかしいつも思うのですがこのパスワードは一体なんでしょう………?」
 shina
 私の名前、というよりも、随分と前に私が目にした『シーナ』という人の名前のような気がしますが。
「………まぁ、行きますか」
 セキュリティをかけなおして、私は扉を閉めました。





あれ?
マスター不登校児じゃないの!?w
えぇ、マスターは普通に学校に行ってますよ。
ただ―――いえ、ここからは椎雫の尾行で分かるでしょう。
ふふふw

ではでは。
不定期更新ですが、また今度です~

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